玉造温泉のおかげで体調は少し持ち直していた。だからあの冷えが戻ってこないように、家ではしっかりお風呂に浸かり、厚着をして、日によってはカイロを貼って過ごしていた。
▷ 湯治について調べた話はこちら → 湯治とは何か|二十一日間の入り方と、私が知った昔からの考え方
カイロとあわせて、寝る前のルーティンになっていたのが小林製薬の「あずきのチカラ」。電子レンジで温めるだけで繰り返し使えて、首肩や目もとをじんわり温めてくれます。あずきの蒸気がやさしいので、貼るカイロとはまた違う心地よさ。冷えや疲れを感じる夜は、これで体をほぐしてからベッドに入ると眠りやすかったです。
長期の湯治はできないけれど、できる形で続ける
行けるときには日帰り温泉に行くようになって、週に1回行ければ行く感じで、月に3〜5回くらい通うようになっていた。長期の湯治はできないけれど、できる形で続ける。それが私にできる選択だったのだと思う。
変化はあった。でも不調が消えたわけではなかった
正直に言うと、温泉に通い始めてすぐにすべての不調が消えたわけではない。冷えは少し楽になる。でもまた戻る日もある。動悸も不眠も「今日はマシだな」と思う日が増えただけで、無くなったわけではなかった。
それでも少しは楽になる。それが続ける理由としては十分だった。
治すより「行きたい」が先にあった
もう一つ、通い続けた理由がある。それは温泉を探すのが楽しかったこと。
日帰り温泉は調べてみると色々あった。銭湯のような小さなところもあれば、スーパー銭湯のように設備が整った施設もある。数百円で入れる地元の人しか知らないような小さな温泉、公民館の中にある源泉かけ流し、住宅街の真ん中に「え?ここ?」と思うような建物なのに中に入ると面白い造りになっているところ。人工温泉のところもあったし、温泉と書いてあっても普通のお風呂のところもあった。
「次はどんなお風呂だろう」。そんな気持ちで出かける時間は、いつの間にか私の楽しみになっていた。
元気なおばあさんたちに出会う
色々な温泉に行くと、必ず常連のおばあさんたちがいる。会話を聞いていると「ずっとここに通っているんだな」とわかる。そしてとにかく元気だ。肌がきれいで、声もはっきりしていてよく笑う。
三重県のある温泉では、体を洗っている後ろ姿を見て「60歳くらいかな」と思っていたら、振り向いたお顔を見て、もっと人生を重ねていらっしゃる方だと気づいて驚いたこともある。それくらい肌がきれいだったのだ。
▷ その温泉の話はこちら → 鈴鹿さつき温泉|常連のおばあさんたちの肌がきれいな、かけ流しの美肌の湯
冷たい水に浸かるおばあさんたち
滋賀県のある温泉には、体温より冷たい冷泉がある。そこにおばあさんたちは本当に長く浸かってらっしゃる。私が「限界。寒い」ともぞもぞしていると、こう教えてくれた。
「初めて? ここはね、首までしっかりと浸かった方が寒くないのよ」「この冷泉は本当に体にいいからね」
そうやって自然に入り方を教えてもらうことが、たくさんあった。
▷ その冷泉の話はこちら → 滋賀・蒲生野の湯|地元のおばあちゃんに教わった、冷たいお風呂の入り方
温泉の中で聞いた人生の話
おばあさんたちの会話を、目を閉じて聞いている時間も、私にとっては心地いいものだった。
神戸の湊山温泉では、阪神大震災のときの話を聞いたこともある。寒さと汚れでどうしようもなかったとき、このお風呂を無料で使わせてもらったありがたさは一生忘れられない、と。感謝いっぱいに話される姿に引き込まれて、聞き入ってしまった。阪神大震災は私も体験していて、妊娠中に一人で味わってとても怖い思いをしている。話を聞きながら当時のことを思い出して、震源地だったこの方たちに頭がさがる思いがした。
▷ その湊山温泉の話はこちら → 【温泉のある場所】湊山温泉
「夫には苦労させられた。でももう今は仏様。先にいってくれたから私は自由で、それも感謝よ」「終わりよければ全てよしって、ホントね」「こうやってお風呂に入れてることが幸せな証拠よ、ホント」
重たいはずの話も、さらりと明るく前向きに。
一方で、自分の話や自慢話ばかりする人がくると、それまで輪になっていたおばあさんたちが自然と散っていくこともあった。「じゃ、私は水のほうへ」「私はサウナにちょっとだけ行ってこようかな」そんな風に。年齢を重ねても人の話を聞かずに自分の話ばかりする人はいて、やっぱりそれは嫌われるのだなあと、そんなことも温泉で気がついた。
お湯に浸かりながら少しずつ知っていったこと
そんな風に通い続けているうちに「お湯って温まるだけじゃないんだ」ということも知っていった。
水圧がかかる深いお風呂。昔の入りにくい深いお風呂も体にはよかったこと。体にかかる圧にも、ちゃんと意味がある。最初はただ温まりたくて行っていただけだったけれど、通い続けるうちに少しずつ、お湯と体の関係に目が向くようになっていった。
温泉に通いながら、私はさらに「水圧」について知ることになる。
▷ 水圧について調べた話はこちら → 【温泉とからだの記録】お風呂の水圧は体にどう影響する?温めるだけではない入浴のしくみ
あの頃のカイロが、今はいらない
ここまでが数年前の記録だ。今読み返して気づいたのだけれど、あの頃あんなに頼っていたカイロを、今年の夏は貼っていない。
去年の夏は暑いのに体の芯が冷えてカイロを貼っていたのに、今年はその芯の冷えを感じない。あの頃「少しは楽になる。それで十分」と思って通い続けたことが、何年かかけてここまで来たのだと思う。すぐには消えなかった不調が、時間をかけて変わっていった。
▷ 冷えが変わってきた話 → 更年期の冷えは変えられる|去年はカイロ、今年は芯が冷えない私の実感
※これは私の体験の記録です。冷えや動悸、不眠が続くときは、我慢せず婦人科や内科で相談してください。

