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連休で宿が取れない|予約なしで13,000円の夜と、天然温泉つきで12,300円の夜

天然温泉 旅人の湯の入口。赤い女湯と紺色の男湯の暖簾が左右に下がり、中央の壁が明かりで照らされている 温泉のある場所

連休の中日に、泊まるところが無かった。

出かける前に調べたときには、その晩に残っているのは一人14,200円のプランだけだった。

この値段は、食事の付いた旅館ならむしろ安いほうだと思う。ただ私たちの旅は温泉に入るのが目的で、宿は寝られればいい。そこにこだわらない旅なのに二人で三万円近くというのが、どうしても釣り合わなかった。

それで諦めて、その晩は車で寝るつもりにしていた。

結果から書くと、車では寝なかった。そして翌日のビジネスホテルとは、700円しか違わなかった。

その日は、思っていたより疲れていた

しみずの湯を出たのが21時。そこから車で寝る場所を探すことになる。

ところが体が思っていたより疲れていた。朝に明治温泉を出てから、城跡を歩いて、平湯の森で入れずに引き返して、夜に温泉で2時間。車のシートで寝るという気持ちが、すっかり無くなっていた。

それで、通り沿いのホテルに入った。予約はしていない。

駐車場は他府県ナンバーばかりだった

入ってみて、思っていたのとは違った。

駐車場は他府県ナンバーばかりだった。地元の車ではなく、旅の途中の人たちだろうと思って見ていた。

部屋を選ぶのはタッチパネルで、そこは普通のホテルと違う。けれど部屋の中に入ってしまえば、作りはビジネスホテルとそれほど変わらない。変な奇抜さも、いやらしさもない。お風呂も普通に湯船とシャワーがある。

不便なのは一度入ると出られないことで、買い物は先に済ませておく必要がある。

寝るには十分だった。一室二人で13,000円。

帰りが、ちょっと面白かった

出るときは、フロントに電話をして、対面で鍵を返して、横にある精算機で支払うという形だった。

入るときは人に会わずにパネルで部屋を選んだのに、帰りは人に会って鍵を返している。人に会う場面と会わない場面が、一軒の中で混ざっている。

最近はこういうホテルでも、普通の宿と変わらない見かけのところが増えているらしい。旅の途中で泊まる人が、抵抗なく入れるようにしているのだろうと思う。

翌日の宿と、700円しか違わなかった

次の日はビジネスホテルに泊まった。富山県砺波市のホテルルートインで、こちらは二人で12,300円だ。

前の晩の通り沿いのホテルが13,000円だったので、差は700円しかない。

これで考えが変わった。安いか高いかは、その値段だけを見ていても分からない。あの晩に残っていたのは一人14,200円のプランだけで、二人なら三万円近くになる。そこに二人で13,000円を並べると、ずいぶん安い。その晩に何が空いていたか次第で、同じ値段が高くも安くもなる。

ホテルルートイン砺波インターの外観。灰色の壁に白い窓の列が並び、青空に社名の看板が見える
富山県砺波市のホテルルートイン。二人で12,300円だった

ルートインに、天然温泉があった

ここからが本題になる。

このビジネスホテルには大浴場があって、それが天然温泉だった。

天然温泉 旅人の湯の入口。赤い女湯の暖簾と紺色の男湯の暖簾が並んでいる
赤が女湯、紺が男湯。「天然温泉 旅人の湯」

暖簾に「天然温泉 旅人の湯」と書いてあって、赤が女湯、紺が男湯になっている。中は大きな湯船がひとつきりの、飾り気のない浴場だった。お湯は近くから汲んできているとのことで、それを聞いたときは、まあそういうものかと思って入っていた。

お湯は透明で、匂いもしない。ただ肌が少しぬるっとするのは分かった。温度は少し熱めで、体感で41℃くらい。湯船がひとつしかないので、そこに合わせてあるのだろうと思った。

上がってから壁の掲示を読んで、思っていたのとずいぶん違うと分かった。

この旅でいちばん濃い温泉だった

庄川清流温泉の温泉成分・禁忌症適応症の掲示表。成分総計16148ミリグラムと書かれている
成分総計16,148ミリグラム。高張性と書いてある

源泉名は庄川清流温泉。泉質は含二酸化炭素・鉄-ナトリウム-塩化物、炭酸水素塩泉。

まず温度の欄を見た。浴用に供する場所での温度が40〜42℃と書いてある。体感で41℃くらいと思っていたので、ちょうど真ん中だった。体の感じで測った温度も、そう外れてはいないらしい。

そして成分総計が16,148ミリグラムあった。

この旅で入った温泉と並べてみる。

温泉成分総計
しみずの湯(岐阜)200mg
明治温泉(長野)1,445mg
ひめしゃがの湯(岐阜)7,669mg
旅人の湯・庄川清流温泉(富山)16,148mg

しみずの湯の80倍だった。

掲示にはもうひとつ、高張性と書いてあった。

これはお湯にどれだけ溶けているかの話だ。人の体の中の水分にも塩やミネラルが溶けていて、その量が1キログラムにつき9グラムくらいになる。温泉のお湯がそれより薄ければ低張性、濃ければ高張性と呼ばれる。

ここのお湯は1キログラムに14.5グラムだった。体の中の水分より濃い。ちなみに海水はだいたい35グラムなので、海水の4割ほどの濃さということになる。

温泉はたいてい体の水分より薄いほうで、この旅で入った他の温泉も、全部そちらだった。

旅館でも、温泉街の日帰り温泉でもない。ビジネスホテルの大浴場が、いちばん濃かった。

遊離二酸化炭素も1,673ミリグラムあって、これはひめしゃがの湯の1,171ミリグラムより多い。鉄も45.4ミリグラム入っている。

肌が少しぬるっとしたのは、炭酸水素イオンが4,092ミリグラム入っているからだと思う。これは重曹の成分で、大阪の祥風苑のぬるぬるも同じ理由だった。

面白いのは、前の晩に入ったしみずの湯がpH9.7のアルカリ性なのに、ヌルつきはそれほど強くなかったことだ。成分そのものが薄かったからだった。ぬるっとするかどうかは、pHだけでは決まらない。

そもそも、あのぬるぬるの正体はお湯ではなく自分の肌から出たものだ。石けんは油とアルカリから作る。アルカリの湯に入ると、肌の皮脂が石けんのようなものに変わる。重曹も同じで、皮脂を溶かす働きがある。どちらも、やっていることは同じだった。

ただ、肌の表面はもともと弱い酸性なので、触れたアルカリはすぐに打ち消される。打ち消されても次を補えるだけの量があれば、ぬるぬるは続く。その役をするのが炭酸水素イオンで、しみずの湯は51ミリグラム、こちらは4,092ミリグラムだった。ここも80倍違う。アルカリ性でも薄ければ肌に触れた途端に力が尽きるし、中性でも重曹がたっぷりあれば溶かし続けられる。

もうひとつ気づいたことがある。この湯は塩化物イオンが4,817ミリグラム、炭酸水素イオンが4,092ミリグラムで、ほぼ同じだけ入っている。塩は肌に膜を作って熱を逃がしにくくする側で、重曹は溶かす側だ。溶かすものと膜を作るものが、ほぼ同量ある。泉質の名前に両方が並んでいるのは、そういうことだった。

泉質別の適応症にはきりきず、末梢循環障害、冷え性、自律神経不安定症、うつ状態、皮膚乾燥症と並んでいた。

ただ、ひとつ引っかかった。鉄が45.4ミリグラムも入っているのに、湯は透明だった。鉄の多い湯は、明治温泉のぬる湯のように茶色くなることが多い。

ただし、扱いは全部入っている

ここで安易に喜ばないほうがいい、とも思った。

同じ掲示に、こう書いてある。

  • 加水している(鉄と塩素イオンの濃度が高いため)
  • 加温している(入浴に適した温度を保つため)
  • 循環ろ過装置を使用している(衛生管理のため)
  • 塩素系薬剤を添加して消毒している(衛生管理のため)

四つとも「あり」だ。

これで、さっきの引っかかりが解けた。加水する理由として「鉄と塩素イオンの濃度が高いため」と書いてある。薄めて、そのうえでろ過している。だから成分表に鉄が45.4ミリグラムとあっても、湯船の湯は透明なのだと思う。

湧き出たときの濃さがそのまま湯船に届いているわけではない。濃いと書いてあることと、その濃さのまま入れることは別の話になる。

源泉かけ流しの見分け方を調べたときに、掲示は正直に書いてあると書いた。ここもその通りで、濃い湯を持っているのに、手を入れていることを全部書いている。隠していない。

水質検査の結果まで貼ってあった

もうひとつ、貼ってあったものがある。

旅人の湯の大浴場の水質検査結果報告書。大腸菌0個、レジオネラ属菌10未満
大腸菌0個、レジオネラ属菌10未満

大浴場の水質検査結果報告書だ。

  • 濁度 0.1未満
  • 大腸菌 0個(基準は1以下)
  • レジオネラ属菌 10未満(基準も10未満)
  • 判定 公衆浴場の水質基準に適合しています

採水は2026年3月16日、検査は3月17日から23日。採水時の湯温は42℃だった。ここでも、熱めに感じた体感と合っている。

消毒なしの温泉が好きだと前に書いたけれど、そのときに調べたのがレジオネラ菌は循環式のほうで増えるということだった。循環させている以上、消毒をして、検査をして、その結果を掲げる。そこまでやっているのを実際に見られたのは、かえって安心だった。

循環と消毒のある温泉を選ばない、という話ではない。大きな湯船でゆっくり汗を流せるのは、旅の途中ではありがたい。

夕食は、スーパーで買って部屋で食べた

夕食は付けずに、近くのスーパーで買ってきた。

ホテルの部屋で食べた夕食。マグロの握り、ねぎとろ巻き、穴子、サーモンと貝の刺身、そして大根寿司
いちばん手前の白いのが大根寿司

マグロの握りと、ねぎとろ巻き。穴子。サーモンと貝の刺身。そして大根寿司。

大根寿司は富山や石川のもので、大根と魚を麹に漬けて発酵させてある。旅先のスーパーは、その土地のものがいちばん分かりやすく並んでいる場所だと思う。旅館の夕食では、こういうものには出会えない。

朝食のほうはバイキングで、こちらは無料だった。

ホテルルートインの朝食バイキング。キャベツと水菜のサラダ、ブロッコリー、小魚の煮付け、漬物、ご飯と味噌汁
野菜を中心に取った

私は野菜を中心に取った。小魚の煮付けと、たくあんときゅうりの漬物。ご飯と味噌汁。前の晩に寿司と刺身を食べているので、朝はこれくらいがちょうどいい。

二人で12,300円に、天然温泉の大浴場と朝食が付いている。あらためて書き出すと、よく取れたものだと思う。

なぜ宿が取れなかったのか、帰ってから調べた

調べたこと数字
訪日外国人の延べ宿泊2024年に約1.4億人泊。2019年より22%多い
2025年1月の訪日客378万人。単月で過去最高
ホテルの平均稼働率81.0%
平均客室単価13,930円

平均の客室単価が13,930円になっている。連休の中日に、一人14,200円しか残っていなかったのは、特別に運が悪かったわけではなかった。

ビジネスホテルに素泊まりして日帰り温泉をはしごするというやり方を前に書いたけれど、その前提だった「安いビジネスホテル」が、もう当たり前には取れない。連休はとくにそうだ。

だから今回のように、予約が要らない宿がどこにあるかを知っておくのは、それだけで一つの手になる。使うかどうかは別として、選択肢があると分かっているだけで、夜の運転が変わる。

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施設データ(天然温泉 旅人の湯)

  • 場所:富山県砺波市
  • 源泉名:庄川清流温泉
  • 泉質:含二酸化炭素・鉄-ナトリウム-塩化物、炭酸水素塩泉(高張性・中性・冷鉱泉)
  • 湧出地の泉温:22.6℃
  • 浴用に供する場所での温度:40〜42℃
  • 溶存物質計:14,475mg/成分総計 16,148mg
  • 遊離二酸化炭素:1,673mg
  • おもな成分:ナトリウム3,558mg/塩化物4,817mg/炭酸水素4,092mg/カルシウム536.3mg/マグネシウム392.5mg/硫酸776.5mg/鉄(II)45.4mg/メタケイ酸81.1mg
  • 加水:あり(鉄と塩素イオンの濃度が高いため)
  • 加温:あり(入浴に適した温度を保つため)
  • 循環ろ過:あり(衛生管理のため)
  • 消毒:あり(塩素系薬剤を添加)
  • 泉質別適応症:きりきず、末梢循環障害、冷え性、自律神経不安定症、うつ状態、皮膚乾燥症
  • 泉質別禁忌症:なし
  • 分析年月日:令和6年2月22日/禁忌症・適応症決定 令和6年8月28日(富山県)
  • 水質検査:2026年3月16日採水。大腸菌0個・レジオネラ属菌10未満。公衆浴場の水質基準に適合
  • 湯船:大きな湯船がひとつ
  • 料金:二人で12,300円(夕食なし。朝食バイキングは無料)

※料金は時期によって変わります。泉質と扱いは館内の掲示によるものです。

この旅で書いた6本

2026年9月の3泊4日。長野から岐阜・富山・石川をまわって、温泉に5つ入った。

▷ この旅のまとめ|5つの湯をくらべて分かったこと

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