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押しても戻らない足のむくみ|知れば怖くなくなる

靴下を脱いだ足首にゴムのあとが残っている水彩画。足首から拡大した円の中に、赤い血管と緑のリンパ管、そのあいだの細胞のすきまに青い水のつぶがたまっているようすが描かれている からだと暮らし

夕方になると足がむくむ。立ち仕事なので、これはもう何年も続いている。

ただ最近はその足を見るのが少し怖い。

若いころもむくむことはあったと思う。でもあのころは「今日はよく歩いたからかな」「立ち仕事が長かったからかな」くらいにしか思わなかった。同じ足を見ているのに、出てくる気持ちが違う。

若いころのむくみとは怖さが違う

若いころのむくみは疲れの印だった。寝たら戻るものだと思っていたし、実際に戻っていた。

今は戻りきらない日がある。戻りきらないまま次の朝になって、そこからまた一日が始まる。

そしてむくんだ足を見た瞬間に「これは病気かもしれない」という気持ちが先に来る。若いころには一度も出てこなかった考えだ。

腎臓。甲状腺。心臓。どれも女性に多いと聞く病気で、どれもむくみが出ると書いてある。知っているぶんだけ怖くなる。

そもそもむくみとは何なのか

調べていて、まずここから分かっていなかったと気づいた。

むくみは血管の中ではなく血管の外に水がたまった状態だった。

体の中では毛細血管からいつも水分がしみ出している。これは異常ではなく、ふだんから起きていることだ。しみ出した水は細胞と細胞のあいだにいて、間質液と呼ばれる。

そして出ていった水には戻り道が2本ある。

  • 静脈。毛細血管の静脈側から吸い戻される
  • リンパ管。回収して血管に返す

出る量と戻る量がつり合っていれば、むくまない。どちらかの戻り道が滞ると、水が外に残ったままになる。それがむくみだった。

立ち仕事でむくむのは静脈側の戻りが悪くなるからだ。足の静脈には血が下に逆流しないよう弁がついていて、ふくらはぎのポンプと弁の二つで血を上へ送っている。立ちっぱなしだとポンプが働かないので、血が足にたまって水を吸い戻せなくなる。

リンパのほうが滞ることもある。手術でリンパ節を取ったあとなどに起きるもので、こちらはリンパ浮腫という別の名前がついている。押してもへこまないことが多いそうだ。

※動脈のむくみ、というものはない。動脈は血を送り出す側なので、詰まったときはむくむのではなく、冷たくなったり痛くなったりする。出方がまったく違う。

押しても戻らないのは重症の印ではなかった

この間こういう話を聞いた。血液検査では腎臓も悪くなかったのに、すねを押すとへこんだまま戻らないという。

それを聞いて、自分の足も押してみたくなった。へこんだままだったらどうしよう。

調べてみて、まず一つ分かったことがある。

すねを5秒ほど強く押して、へこんだまま戻らない。これは「むくみがある」の判定そのものだった。病院でもそうやって確かめる。

押す場所はすねの骨の上になる。やわらかいところではなく、骨のかたいところを指で5秒。

へこむのは皮膚の下にたまった水が指に押されて横によけるからだ。水が戻ってくるまでへこんだままになる。

つまり「押しても戻らない」は重症の印ではない。むくんでいるかどうかを見分ける方法の名前だった。

ここが分かっただけでだいぶ落ち着いた。

立ち仕事のむくみは持ち越される

私のむくみはたぶん単純な話だ。

立ったまま動かない時間が長いと、足に血がたまる。ふくらはぎの筋肉は縮んだりゆるんだりしながら血を上へ送るポンプの役をしていて、立っているだけだとそのポンプが働かない。

それで夕方にはむくむ。

問題はその先だった。おさまりきらないうちに、次の日の立ち仕事が始まる。

夜に靴下を脱ぐと、ゴムのあとがくっきり残っている。朝には消えていることが多いのだけれど、朝からむくんでいる日もある。

そういう日はむくんだところからその日が始まる。一日ぶんが残ったところに、また一日ぶんが乗っていく。

休みをはさむと、ちゃんと戻る。だから病気ではないのだと思う。でも次の週には、また同じことが起きる。

一日の話ではなく、持ち越しの話だった。

お風呂で戻るのは温かいからではない

むくんだ日に湯船に浸かると、ちゃんと戻る。

ずっと「温まるから血が巡るのだろう」と思っていた。でも効いているのは温度だけではなかった。

水圧だ。

湯船に入ると足元ほど強い水圧がかかる。着圧ソックスを履いているのと同じことが起きていて、たまった血や水分が心臓のほうへ押し戻される。

▷ お風呂の水圧って体にどう働く?|温熱・水圧・浮力と、立ち風呂の水圧は約2倍

これに気づいてから、むくんだ日は「温まりに行く」ではなく「押してもらいに行く」つもりで湯船に入る。

シャワーだけの一週間で残ったままになった

この夏は家族全員がシャワーだけで過ごした一週間があった。

そのときはっきり出たのがこの足だった。湯船に浸からないと夕方のむくみが残る。残ったまま次の日が始まる。日に日に重くなっていった。

▷ シャワーだけだと体はどうなる?|湯船に浸からない一週間で、私に出た冷え

水圧がかからないというのはこういうことなのだと、そのとき分かった。

血液検査で分かることと分からないこと

ここからがいちばん知りたかったところだ。

血液検査が正常なのにむくみが引かない。あの話はどういうことなのか。

血液検査で分かるのは体ぜんぶに関わる原因のほうだ。腎臓、肝臓、甲状腺、血液の中のたんぱく質。そこに異常がなければ、全身の病気はひとまず外れる。

これは小さい話ではない。怖いと思っていたものの大半がそこで消えている。

そして残るのは足そのものの問題になる。

足の静脈の弁は血液検査に映らない

立ち仕事を長く続けていると、足の静脈にある弁が傷むことがある。

静脈には血が下に逆流しないようにする弁がついている。立ちっぱなしでその弁に負担がかかり続けると、だんだん閉じが悪くなる。下肢静脈瘤や慢性静脈不全と呼ばれるものだ。

これは血液検査には映らない。

見るのは超音波、エコーになる。足に当てて、血が逆に流れていないかを見る。診てもらうなら血管外科か循環器内科だ。

そして血管がボコボコ浮き出ていなくても起きる。むくみとだるさだけのこともあるので、「血管が出ていないから違う」とは言えない。

困ったことに、出方だけでは見分けがつかない。弁が傷んだときの特徴として「朝は軽くて、午後から夕方にかけてひどくなる」「ふくらはぎの内側と足首のまわりに出る」と書かれている。でもこれは立ち仕事のふつうのむくみとまったく同じ出方だ。私の足もそのとおりになる。

だから見分けるにはエコーで中を見るしかない。

ただ、自分で気づける変わり目はあると思う。休んでも戻らなくなったときだ。今までは一晩寝れば戻っていた。休みをはさめば戻っていた。それが戻らなくなってきたら、そこが相談どきなのだと思う。

血液検査が正常でむくみだけが続くなら、次に見るのは足の静脈になる。

※片足だけが急に腫れたとき、それと痛みや息切れをともなうときは別の話になる。足の奥の静脈に血のかたまりができる病気の可能性があるので、お風呂で様子を見ずにその日のうちに診てもらってほしい。むくんでいるところに色素沈着や湿疹、かゆみが出ているときも、早めに診てもらったほうがいいそうだ。

弁がゆるんでいたらどうなるのか

弁が傷んでいたとして、それは怖いものなのか。ここがいちばん知りたかった。

調べてみると、急いで命に関わるような病気ではないらしい。ただし自然に治るものでもない。弁は一度ゆるむと元には戻らない。

放っておくと、足首のあたりの皮膚が黒ずんでくることがある。この黒ずみは一度できると消えにくいそうだ。

治療はある。弾性ストッキングは進行を遅らせるためのもので、根本から治すならレーザーや手術になる。

つまり急がなくていいけれど、放っておく種類のものでもなかった。早いうちに分かるほうがやることが軽くて済む。

毎日できること

調べたあとも、私のやっていることは変わらなかった。

  • 湯船に浸かる。温度より足元の水圧のほうを目当てにする
  • 立ちっぱなしのあいだにふくらはぎを動かす。かかとを上げ下げするだけでいい
  • 足首が動く靴をはく

▷ 温泉で足首を見ていて気づいた足の話|立ち仕事のむくみと、丸五の足袋シューズ

どれも前からやっていたことだ。変える必要がないと分かったのが今回のいちばんの収穫になった。

怖さは行き先が分かると落ち着く

むくんだ足が怖いのはそれが何なのか分からないからだと思う。

分からないまま見ていると、いちばん怖い病気のほうに考えがいく。年をとるほど、その引き寄せが強くなる。

でも調べてみたらちゃんと順番があった。

押して戻るかどうかは、むくみがあるかの判定。血液検査は、全身の病気を外すため。それでも残るなら、足の静脈を見る。

順番が分かっていれば、足を見ても前ほど怖くならない。知らないことが怖いのであって、むくみそのものが怖いわけではなかった。

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