前回までは温泉の水風呂の話だったけれど、今回は家で毎日やっている「朝の水シャワー」について書こうと思う。
これも南山紘輝さん(@nlpe.17)の話を聞いた翌日から始めたのだけれど、ちょうど9月だったのは運がよかったと思う。
最初の入り口は意外と低かった
もともと温冷浴をしていたし、夏は水でシャワーを浴びることも多かったので、始めた頃の9月は夏の生活と何も変わらず、拍子抜けするくらい楽だった。
でも思い返すと、30代で初めて夏に水シャワーをした時は夏なのにすごく冷たく感じて苦痛だった。あれが苦痛だったので、慣れていない人が夏でもいきなり水を浴びるのに勇気がいるのはよく分かる。しかも朝となると、体がまだ目覚めていないぶん余計に冷たく感じるはずだ。
水シャワーの前に必ず体を温める
私は水シャワーの前に、軽くストレッチや体操をして、深部体温を少し上げた状態で入るようにしている。理由は「ヒートショック」が怖いからだ。
ヒートショックというのは、暖かい場所と寒い場所を行き来したときに起きる。急な温度差(目安は10℃以上)で血管が縮んだり広がったりして血圧が乱高下するので、ひどいと失神や心筋梗塞・脳梗塞につながることもある。冬のお風呂場の事故として毎年ニュースになるのがこれだ。
寒い脱衣所でいきなり冷水を浴びると、血管が一気に収縮して血圧が急上昇するので、ここが危ない。だから私は先に体を温めて血管を広げてから水に入るようにしている。体が温まった状態から入ると、血圧の変化がゆるやかになって、急激な負担を避けられるからだ。
運動が続かない私の工夫
正直に言うと私は運動習慣がなく、ハードルを高くするとすぐに続かなくなる。そこで、YouTubeで「SAKIさんのエレコアメソッド」という動画を見ながら体を動かしている。名古屋・東京でパーソナルトレーニングスタジオを運営されているSAKIさんが、バレエやピラティスをもとにしたエクササイズを配信されているチャンネルだ。
このエレコアメソッドが、私にはとてもありがたい。40代50代でもやりやすいように、運動習慣のない人でもできるように組まれているのでまさにこの年齢で運動習慣のない私にぴったりなのだ。やみくもに筋肉を鍛えるのではなく、ストレッチをしながら筋肉を使う。だから無理なく続けられるし、体調もよくなる。
10分ほどの動画がたくさんあって、元気な時はハードなもの、「今日はしんどい」という日は座ったままできるストレッチと、その日の体調で選べるのがいい。軽いストレッチでも深い呼吸を意識してやるとじんわり熱くなって汗が出てくる。この体が温かいうちに、すぐ水シャワーへ向かう。
SAKIさんは著書も出されていて、動画とあわせて読むと体の使い方がより深くわかります。
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冬の朝の水シャワーは本当に勇気がいる
冬の朝は本当に寒い。私は朝が早くて5時には浴びることが多いのでものすごく勇気がいるのだけれど、しばらく続けていて面白い発見があった。
朝シャワーを必死にやった日はどんなに気温が低い一日でも寒さを感じないのだ。面白いくらいに、寒くて震えることがない。朝のシャワーで一度しっかり冷たい思いをしておくと、その後の一日がぐっと楽になる。これに気づいた時はやる気につながった。
続けていると、本当に寒い日でも凍えることなく日中を過ごせるので服も薄着で平気になってくる。
南山さんが言っていた「ドーパミン」のこと
南山さんから聞いたのは、朝の水シャワーを浴びると依存性の高い物質と同じくらいの量のドーパミンが出るという話だった。確かに私も浴びた瞬間からものすごくテンションが上がって、歌い出したくなる。浴びた後は「自分に打ち勝ってやり遂げた」という実感があって、自信がみなぎったような状態になる。それくらい冬の朝の水シャワーはつらいのだけど、このテンションの上がり方のおかげで、一日をすごく前向きに過ごせる。
しかもこういう物質と違って、急に落ちて反動が来ることはないという話だった。
これも聞いた話のとおりで、日中はずっと元気だ。仕事もはかどるし、ずっと鼻歌を歌っているような気分で過ごせる。そして夜は布団に入るとすぐ熟睡してしまう。冬に朝水シャワーをしていると、不眠で夜中に目が覚めることがほぼない。
これはきっと自律神経が整ってうまく働いているのだろうと思って調べてみると、まさにその通りだった。朝に光・運動・冷水でしっかりオンにすると、活動ホルモンのコルチゾールが出て体内時計がリセットされる。同時に睡眠ホルモンのメラトニンの分泌が止まり、その約14〜16時間後にまたメラトニンが出て深部体温が下がり、自然に眠くなる。朝しっかりオンにするから夜きれいにオフ(熟睡)に切り替わる。南山さんが言っていた「オンがあるからオフがある」が、ちゃんと体の仕組みとしてあるのだと納得した。
このドーパミンの話はあとで調べ直した
この記事を書いたあとにミトコンドリアのことを調べていたら、ひょんなところでこの話に戻ってきた。そうしたら私が書いていた道筋そのものが違っていたので、ここに書き足しておきたい。
脳の入口には関所がある。血液脳関門という名前で、血に乗ってきたものを通すか通さないかをここで選り分けていて、ドーパミンはこの関所を通れない。通れるのはドーパミンの素のほうだ。食べたものから来たドーパミンの素が血に乗って関所を通り、脳はそれを受け取って自分が使えるドーパミンを作っている。
ここで分からなくなった。脳はドーパミンの完成形を受け取れないのに、血中には完成形のドーパミンがちゃんとある。あれは何のためにあるのだろう。
調べてみて、これが面白かった。血中のドーパミンは、脳のために作られたものではなかった。作っているのは腸や副腎、それに腎臓で、それぞれの場所で別の仕事をしている。腎臓では塩を外に出し、血管ではその血管をゆるめ、腸では腸の動きをうながしている。どれも体の中の仕事ばかりで、気分とは何のつながりもない。テンションを上げる脳のドーパミンとは、まったく別の働きをしている。体の中で作られるドーパミンの半分近くは内臓が作っているそうだ。
同じ名前の物質が、脳の中と体の中でまるで別の仕事をしている。関所があるおかげで、その二つが混ざらずに済んでいる。ここまで分かって、やっとスッキリした。
冷たい水の研究で増えたと報告されていたのも、血中のドーパミンのほうだった。では私が「ドーパミンが出るから気分が上がる」と思っていたのは、何だったのだろう。
では気分が上がるのは何なのか
血中の完成したドーパミンは、やはり関係がなかった。皮膚が冷たさを感じると、その知らせが神経を通って脳に届く。脳はその知らせを受けて、血中にあるドーパミンの素を取り込んで、脳の中で自分が使えるドーパミンを作る。
血中にあるドーパミンの素は、脳に関係がある。でも完成した血中のドーパミンは、脳には関係がなかった。
ただ生きている人の脳の中のドーパミンの量は、まだ測る方法がない。だから本当に増えているのかは誰にも確かめられていないけれど、浴びたあとに気分が上がるのは本当で、それは毎朝感じている。
高血圧と冷水のことも書いておきたい
高血圧は国民病で、悩んでいる人も多いと思う。だからこそ、温浴と血圧のことを少し書いておきたい。
水風呂や冷水が高血圧に直接いいわけではない。それどころか入り方を間違えると体に負担になる。冷水に入ると血管が縮んで、一時的に血圧は上がるからだ。
温かいお湯のほうは浸かると血管が広がって血流がよくなり、一時的に血圧が下がるとされている。続けることで血管がしなやかになるという話もある。
危ないのは「血圧の急な上下動」だ。だからこそいきなり冷水ではなく、体を温めてから、段階的に、毎日少しずつ慣らしていくことが大事になる。私が水シャワーの前にストレッチをするのも、温冷浴で段階的に冷やすのも、この急激さを避けるためだ。
入り方を工夫して続けていけば、結果的にいい方向に向かうのではないかと思っている。ただそこは私の実感で、言い切れるところではない。
※持病のある方、特に高血圧や心臓に不安のある方は必ず医師に相談してから始めてください。
続けると肌が慣れてくる
毎朝していると、習慣になるのと、肌が水に慣れるのとで、思っていたよりつらくなくなってくる。でも面白いもので一週間ほど間があくと、つらさは元に戻る。日中の寒さも戻ってきて、「寒いってこんなにつらいんだ」とあらためて感じる。続けることに意味があるのだと、間があくたびに実感する。
そして温泉の水風呂がもっと気持ちよくなった
朝水シャワーをしていると肌が水に慣れているので温泉に行っても水風呂から先に入ることができる。さすがにいきなり長くは無理だけど、30秒くらいなら気持ちよく入れる。
こうなってくると、水風呂に入った時に癒される感情がものすごく溢れてくる。入った瞬間に「あー、気持ちいい。なんて幸せなんだろう」と、本当に心が緩んで癒されている自分を感じるようになる。不思議なことに、熱いお風呂も気持ちいいのだけど、そこまでの癒しの感情は出てこない。
ゆるんでいるのは気持ちだけで、体は逆に身構えていた。
調べてみると、冷たさと温かさは別の神経を通っていた。冷たさを運ぶ線維は薄い膜に包まれていて、秒速5〜10メートルで信号を送る。温かさを運ぶ線維には膜がない。こちらは秒速0.5〜1メートル。
十倍ちがう。
膜のあるなしで、信号の進み方が変わるらしい。膜のない線維は端から端まで這って進む。膜のある線維は膜が一定間隔で途切れていて、その切れ目から切れ目へ飛び移って進む。這うか、飛ぶか。その差だという。
だから冷たさは点で届いて、温かさはじわじわ広がる。水風呂の「あー」が、お湯に浸かったときの気持ちよさと質が違って感じるのはここだと思う。脳に直接ぶつかってくる感じがするのは実際に速いからだった。
もうひとつ、落差の話がある。
温まった体で水に入れば気持ちいい。冷えた体でお湯に入れば、また気持ちいい。そんなことは通っていれば体が先に知っている。
ただその当たり前にもちゃんと名前があった。アリエステジアという。同じ刺激でも体の状態しだいで快と不快がひっくり返る。1968年にフランスの生理学者が見つけたものだ。
順番を逆にすると、よく分かる。冷えきった体で水風呂に入ってもつらいだけで終わる。同じ水なのに。
だから温冷浴では水風呂がお湯の下ごしらえになり、お湯が水風呂の下ごしらえになる。
ただし体はゆるんでいない。
冷たい水に入っているあいだ、交感神経は全開で働いている。血管を縮めて心拍を上げて、熱を逃すまいと守りに入っている状態だ。
そのまま2〜3分浸かっていると、心拍が落ちてくる。
ここが誤解しやすいところで、くつろいだから落ちるのではない。皮膚の血管が縮んだぶん、手足にあった血液が体の中心に押し戻される。中心の血液量が増えて血圧が上がる。首と胸にある血圧のセンサーがそれを感知して、心臓にブレーキをかける。緩んだのではなく、上がりすぎた血圧を下げにいっている。
あとで分かったことだが、この「中心に戻る」には続きがあった。奥蓼科の明治温泉でとにかくトイレが近くなったのも、もとはこれだった。
水風呂から先に入る日は30秒で出るのでそこまでは行っていない。でもお湯に浸かったあとの水風呂には5分から7分入っている。こちらは途中でその切り替わりが起きていることになる。
といっても心拍が落ちたかどうかは自分では分からない。私が2〜3分あたりで感じるのは芯が冷たくなってくることのほうだ。そこから首まで浸かっていたのを胸まで出したりして、深さを調整しはじめる。
どちらにしても「あー」と声が出るのは入った瞬間だ。あの瞬間の体はまだ高ぶっている途中にある。
ゆるんでいないのに、気持ちいい。
気持ちいいというと、力が抜けることだと思っていた。でもそうとは限らない。
体を動かしたあとの、あの感じ。息は上がっているし、心臓も速いまま。ゆるんでなどいない。それでも気持ちがいい。
高ぶったままの気持ちよさというものが、ちゃんとある。
水風呂はそちら側だった。冷たい水に入った人の気分を測った研究でも上がったのは「活発」「冴えている」といった言葉のほうで、ゆるむ方向の言葉は出てこない。
気持ちよさの中身が、お湯とは違っていた。お湯はじわじわ広がって、体の力が抜けていく。ゆるむ気持ちよさだ。水風呂のほうは速くて鋭い。体は縮こまったままなのに、それでも気持ちがいい。温まった体で入るからなおさら効く。
同じ「気持ちいい」という言葉を使っていたけれど、別のものだった。
水風呂ではまわりの人もよく声を出している。「あー」「ふぅー」と息を吐いて、気持ちよさそうにしている。お湯ではあまり聞かない。
声が出るのはたぶん息のせいだ。冷たい水に入ると呼吸が勝手に速くなる。慣れた人はそこで意識してゆっくり吐く。それが落ち着きを早めるという。「あー」も「ふぅー」もその吐く息に乗っている。お湯では呼吸が乱れないから乗せる息がない。
体を芯まで冷やす「アイスバス」の考え方
この体を芯まで冷やすという入り方は海外では「アイスバス」として注目されていて、「アイスマン」と呼ばれるウィム・ホフという人が広めた方法でもある。彼の本は日本語版も出ていて、冷水と呼吸法のことが詳しく書かれている。私の朝シャワーや温泉の水風呂のやり方とも南山さんの話ともつながっていて、読むと納得が深まると思う。
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※この記事はきっぽ個人の体験をもとにしています。持病のある方、高血圧や心臓に不安のある方は必ず医師に相談のうえ、無理せず行ってください。

