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蒲田の黒湯温泉|東京で一番黒いお湯に入りに、夫婦で通うようになった話

温泉のある場所

黒湯というお湯を知っているだろうか。東京・蒲田に、墨のように真っ黒なお湯がある。「蒲田の黒湯が一番黒くて、効能も強いから一度は入るべき」と教わって、数年前に入りに行った。それ以来すっかり気に入って、東京に用事があるたびに夫婦で寄り道するようになった。

そもそも黒湯って何だろう

黒湯が黒いのは、フミン酸という有機物のせいだそうだ。大昔の海辺に生えていた海藻や木の葉などが地層に閉じ込められて、何万年もかけて分解されてできた成分で、これがお湯を黒く染めている。汚れているわけではないけれど、独特の匂いはある。硫黄泉のような強い匂いではなく、土や植物を思わせるような、少し油っぽくもある不思議な香りで、モール臭と呼ばれるそうだ。私はこの匂いも含めて黒湯だと思っている。

黒湯は全国にあるけれど、特に色が濃いのは関東南部だそうで、なかでも東京の黒さは全国屈指らしい。蒲田のある大田区は、23区でいちばん温泉施設が多い温泉の街でもある。

「黒湯って全部同じ」じゃなかった

私はずっと、黒湯といえばどれも同じものだと思っていた。でも調べてみると、そうではないらしい。

黒さはフミン酸の量で決まるので、量が多ければ3センチ下も見えないくらい真っ黒になるし、少なければ10センチくらいは透けて見える。しかも、元になった植物や分解のされ方が産地によって違うので、成分そのものも土地ごとに個性がある。インスタで見た九州の黒湯が蒲田より薄い色に見えたのは、きっとそういう違いなのだと思う。同じ「黒湯」でも、全部同じではなかった。これは意外と知られていないんじゃないかと思う。

蒲田温泉に入ってきた

最初に入ったのは、蒲田温泉。東京に用事があって、その帰りに無理やり予定に組み込んで寄った。夜だったので、駐車場を探すのに苦労した。お店のガレージは2台だけで、開いているか分からなかったので、近くのコインパーキングに止めた。夜の知らない町でパーキングを探すのは、なかなか大変だった。

小さな町の銭湯だけれど、薪でお湯を沸かしていて、源泉かけ流しの加水なし。高温風呂と低温風呂があって、サウナと水風呂もある。サウナは入っていないけれど、水風呂は使わせてもらった。熱いお湯と水風呂の両方があるのは、温冷浴が好きな私にはうれしい。

▷ 私の水風呂の入り方はこちら → 私の水風呂の入り方|温泉で体を芯まで冷やす温冷浴のやり方

とにかくお湯が真っ黒だ。コーヒーというより墨に近い黒さで、透明なお風呂に入るときは「かけ湯をしてから」と書いてあった。それくらい黒い。湯船のふちも黒くなってしまうので、慣れていないと少し驚くと思う。

でもこのお湯にはすごいパワーがあって、入っているときも、上がってからも、体が元気なのがはっきり分かる。肌のすべすべが数日続くくらいだ。今まで入ったいろんな温泉と比べても、ダントツで効能が高い気がする。私に合っているのかもしれない。夫も肌のすべすべ感が長く続くと言って、すっかり気に入ったようすだった。こんなに強いお湯に毎日入っている人は、どんなに元気なんだろうと思う。

この日はもう夜遅くて、お客さんは数人だけ。静かだったので、どんな方がいたのかはあまり記憶にないけれど、なんとなく年配の方が多そうな雰囲気だった。

黒湯が忘れられず、改正湯へ

一度入ったら黒湯が忘れられなくなって、次に用事ができたとき、また夫婦で蒲田に寄り道した。今度は違うお風呂に入ってみようと、改正湯さんにお邪魔した。

ここは蒲田温泉よりもっとこじんまりしていた。日曜の夕方5時頃だったけれど、お客さんは3人ほど。湯船ひとつひとつがとても小さくて、3人でいっぱいになってしまう湯船も多い。黒湯の冷たいお風呂があった記憶がある。あとで調べてみたら、やはり黒湯の水風呂だった。お湯の濃さは蒲田温泉と同じくらい、しっかり濃い色をしていた。

黒湯に炭酸を組み合わせたお風呂があるのが改正湯の名物で、この組み合わせは全国でもここだけなのだそうだ。同じ蒲田の黒湯でも、お店ごとに個性があるのが面白い。

次は「和 -なごみ-」に泊まりたい

蒲田の黒湯にすっかりはまって、次に絶対に泊まりたいと思っている宿がある。SPA&HOTEL 和 -なごみ- だ。ここも黒湯の源泉かけ流しで、しかもかなり濃いとうたっている。まだ入ったことはないけれど、ホームページで見るとお風呂の種類も多くて、とてもきれいそうだ。

ここが面白いのは、料金の仕組みだ。日帰りでゆっくり入ろうとすると2千円以上かかる。ところがここはビジネスホテルなので、泊まればその宿泊料金の中で黒湯に入り放題になる。つまり、日帰りより泊まったほうがずっとお得に、しかも何度でも黒湯を楽しめるということだ。(早朝や深夜の短い時間なら、日帰りでも2千円以内で入れるようだ。)だから次は、ここに泊まって黒湯を心ゆくまで堪能したい。

ただ本当に人気で、埋まっていることが多い。私も何度か予約を見てみたけれど、いっぱいで取れなかった。ガレージの数も少ないので、車で行く人はお部屋と一緒にガレージもしっかり確認・予約しておいたほうがいい。泊まりたい日が決まっているなら、とにかく早めに動くのがおすすめだ。

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蒲田は、面白い街だった

蒲田は温泉だけの町ではなくて、街そのものがとても面白い。いろんな国の方のお店があって、多国籍な料理が食べられる。インド料理、タイ料理、中華、本当にいろいろある。

タイ料理が食べたくて、ビルの2階を見上げたらタイ料理の看板が出ていた。階段を上がって扉を開けると、中は紫の空間で「ス、スナック……?」と驚いたことがある。お昼時だったのでびっくりしたけれど、海外の店主さんの笑顔と「どうぞ」の一言で、紫の椅子に座った。よく見ると仕事中のランチのお客さんもいて、普通ににぎわっていた。そのとき食べたカオマンガイは、シンプルだけどおいしかった。

スパイスを売っている問屋さんのようなお店もあって、入ってみたら日本語の表示がなくて、何のスパイスか分からない。お店の人に聞いても言葉が通じなくて、結局、目で見て分かるクミンだけを買って帰った。こういう出会いがあるのが、蒲田の楽しさだと思う。

ちなみに蒲田は、あの映画『蒲田行進曲』の蒲田でもある。昔は松竹の撮影所があって「キネマの天地」と呼ばれた映画の街だったそうで、今は跡地が区民ホール「アプリコ」になっていて、当時の橋の親柱やジオラマが残っているらしい。次に行くときは、黒湯のついでにのぞいてみたい。

温まりが強いのは、「膜のダブル」だった

あとで泉質を調べてみたら、蒲田温泉の黒湯は「ナトリウム炭酸水素塩・塩化物冷鉱泉」というものだった。むずかしい名前だけれど、面白いことが分かった。

まず塩化物泉は、塩の成分が肌の表面に膜を作って、汗が蒸発するのを防ぐ。だから体の熱が逃げにくくて、保温力が高い泉質なのだそうだ。冷え性や、更年期のような慢性的な不調にいいとされている。そしてもうひとつ、黒湯の色のもとであるフミン酸も、体の表面に膜を作って熱を逃がさない働きがあるという。

つまりこの黒湯は、塩の膜とフミン酸の膜の、二重の膜で熱を閉じ込めてくれる。道理でよく温まるわけだと納得した。上がったあともずっとぽかぽかで、肌まですべすべなのは、この「膜のダブル」のおかげだったのだと思う。私が「効能が強い」と感じたのは、気のせいではなかったようだ。

▷ 冷えに効く茶色いお湯といえば → 尼崎・つかしん天然温泉 湯の華廊|冷えに効くと教わって、夫婦で通うようになった茶色いお湯

もちろん温泉の効能は、体質や体調によって感じ方が変わる。これは治療ではないので、つらい症状があるときは婦人科に相談するのが一番だと思う。それでも、こんなに体が楽になるお湯があるということは、同じように冷えや更年期でしんどい人に伝えたい。

黒湯は、一度は入ってみてほしい

私が蒲田を歩いたのは5年ほど前、蒲田温泉に入ったのが2年ほど前、改正湯が去年くらい。3回通って、最初のころはまだ温泉を意識していなかったから、食べ物だけを楽しんで帰ってきた。次はなごみに泊まって、黒湯と多国籍の料理と、この面白い街をまるごと楽しみたい。

黒湯は、写真で見ると驚くかもしれないけれど、一度入る価値があると思う。あの黒いお湯のパワーは、入ってみないと分からない。

※お湯が濃く効能も強いので、体調のすぐれない日は無理をせず、のぼせやすい方は短めに。持病のある方は入浴前にかかりつけ医に相談を。

(各施設の最新の営業時間・料金・駐車場は、蒲田温泉・改正湯・和-なごみ- それぞれの公式サイトでご確認ください。蒲田温泉改正湯SPA&HOTEL 和 -なごみ-

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