これは数年前、私の更年期がいちばんつらかった頃の記録だ。冷えに始まって、汗、動悸、眠れない夜。あの頃は何かを変えようという気力さえ湧かなかった。今読み返すと、よくあの中にいたなあと思う。
冷えだけじゃなかった。体と心がバラバラになる感覚
冷えが一番つらかったけれど、今思うとしんどさはそれだけではなかった。
急に起こるホットフラッシュと汗
急にカーッとホットフラッシュが起きて汗をかくことがあった。それは人前のときもあれば一人のときもある。一人なら正直どうにでもなる。着替えればいいしシャワーを浴びることもできる。だから一人のときはそこまで気にならなかった。
でも人前だと違う。顔や首、背中から汗がダラダラと流れてきて、頭の中は「今は困る」という気持ちでいっぱいになる。タオルでそっと押さえても追いつかない。
ただ当時は、汗が嫌だと思うだけだった。ホットフラッシュの知識もなかったし、知ろうともしていなかった。なぜ起きるのか、起きることで体がどうしんどいのか。それを知らなかったから、自分の本当のしんどさにもちゃんと気づけていなかったのだと思う。
▷ 夏の暑さでホットフラッシュが悪化した話はこちら → 更年期に冷房を我慢しない|ホットフラッシュと眠れない夜が、たった1日で楽になった
あとから知った、ホットフラッシュの仕組み
ずいぶんあとになって、なぜ起きるのかを調べた。
更年期はエストロゲンという女性ホルモンが減っていく時期だ。そしてエストロゲンは、脳の視床下部という場所で体温を調節する働きを支えている。
エストロゲンが減ると、その調節が不安定になる。具体的には、「汗をかき始めるライン」と「震え始めるライン」の間の幅が、極端に狭くなる。
普段なら何ともない小さな体温の変化で、「暑い→汗」「寒い→震え」のスイッチが激しく入る。
これを読んだとき、ずっと引っかかっていたことが解けた。
冷えと汗が同時に来るのは、矛盾ではなかった。どちらも同じひとつの原因から出ていたのだ。
もうひとつ、エストロゲンにはノルアドレナリンの働きを抑える役割もある。だから減るとノルアドレナリンが過剰に働いて、温度を感じるセンサーが過敏になる。
あのとき、これを知っていたら。知ったところで汗が止まるわけではない。それでも「自分の体がおかしくなった」という不安だけは、ずいぶん軽かったはずだ。
動悸が増えていく不安
動悸を感じることも増えていった。心臓がドキドキと早く動いているのがわかると、それだけで不安になる。
動悸も同じ流れにあった。エストロゲンが減ると交感神経が優位になりやすい。体がずっとアクセルを踏んでいるような状態になる。
更年期だと思っていたら、違うこともある
ただ、調べていてひやりとしたことがある。
甲状腺の病気は、更年期ととてもよく似た症状が出る。
- バセドウ病(甲状腺の働きが強すぎる)=動悸、汗が多い、体重が減る、疲れやすい、イライラ、不眠、手の震え
- 橋本病(甲状腺の働きが弱い)=寒がり、まぶたのむくみ、肌のカサカサ、気力が出ない、めまい、疲れ
並べてみて、ぞっとした。この記事に書いてきた症状と、ほとんど同じだ。
甲状腺は血液検査で分かる。
私は当時、病気と言われるのが怖くて病院に行かなかった。でも今思えば、行っていれば少なくとも「違う」ということは分かった。分からないまま何年も不安を抱えるより、そのほうがずっと楽だったはずだ。
これくらい大丈夫と思っていた頃
病院に行こうかと思ったことは何度もあった。でも病気と言われるのが怖くて、結局、不安を抱えたまま時間だけが過ぎていった。今思えば、行かなかったから余計に不安が膨らんだのかもしれない。でも当時はそれが精いっぱいだった。
夜になると限界がはっきり見えた
夜は全然目がもたなくて、用事を済ませたら早く布団に入りたいと思っていた。私は朝が早い生活なので、21時半頃に布団に入って4時頃に起きる毎日だ。
布団に入ると10分もしないうちに眠っていた。というより、一瞬で意識を失うように眠り落ちていた。それだけ体も気力も限界だったのだと思う。
でも夜中の1時ごろに目が覚めてしまう。目が覚めると汗をたくさんかいている。体がカーッと熱くなっていて布団の中が不快で、そこからなかなか寝つけない。そんなとき、動悸を感じることもあった。ドキドキと心臓が早く動いているのがわかって、それで余計に目が冴えてしまう。
一度目が覚めると2時間近く眠れないこともあった。ひどいときは、やっと寝たと思った30分後にまた目が覚める。それを何度も繰り返す夜もあった。
朝起きても体は重く、だるさが抜けないままボーッとした状態で一日を過ごす。そんな日が増えていた。そのぼんやりした様子を、家族や友人に心配されたこともある。
夜中に暑くて目が覚めて汗だくになっていると「これも更年期なんだろうな」と思う反面、以前読んだガンの体験記に「異常な寝汗が続いていた」と書いてあったことを思い出して、また不安になることもあった。
▷ 眠れない夜の話はこちらにも書いた → 些細なミスで眠れなくなった夜|更年期の落ち込みと、脳に「大丈夫」と言い聞かせる朝シャワー
気力が失われていく感覚
気力がどんどん落ちてくると「このまま大病になるのかもしれない」という恐怖はあるのに、頑張ろうという力が出てこない。次第に諦めのような気持ちが入り込んで、ただ嘆いてため息をつくだけの日も増えていった。
もともとの私は好奇心が強くて、気になったことは自分で体感しないと気が済まないタイプだ。でもその頃は、そんな好奇心さえ湧いてこなくなっていた。病気や死への怖さは感じているのに、何かを変えようという前向きな気持ちがどうしても出てこなかったのだ。
何も変えられなかったあの頃
そんな状態のまま、私はある温泉へ向かうことになる。そのときは、それが自分の体との付き合い方を見直すきっかけになるなんて思ってもいなかった。
あの頃の私に伝えたいこと
ここまでが数年前の記録だ。そして今は、あの頃よりずいぶん楽になっている。
温泉に通って温冷浴を続けるうちに、体が自分で温まり直すようになった。去年の夏は暑いのに体の芯が冷えてカイロを貼っていたのに、今年はその芯の冷えを感じない。
そして、この記事を読み返して気づいたのだけれど、今は動悸がゼロだ。あんなに不安だった動悸が、いつのまにかなくなっている。自分でも驚いた。これは私にとって、とても大きな変化だと思う。
ホットフラッシュは今もある。でも知識ができたことで、長引かせない工夫ができるようになった。
やっていることは単純だ。カーッと来たら我慢しない。手首と首を水で濡らす。冷房を切らない。頭を冷やす。
どれも「熱を早く逃がす」ということだ。幅が狭くなってスイッチが入りやすいのだから、入ってしまったら早く元へ戻してやればいい。そう考えられるようになった。
▷ 手と首を水で冷やす話 → 暑い日は手と首を水で冷やす|更年期の夏はこまめに熱を逃がして過ごす
▷ のぼせと頭の冷やし方 → 更年期はお風呂でのぼせやすい|シャワーだけになった人へ、ぬる湯と「頭を冷やす」入り方
冷えのほうで今も続けているのが、足裏にひっかけて使うヨガ用のロングレッグウォーマーだ。締め付けがないので昼間はもちろん、冷える夜はそのままつけて眠れる。足元が温まると、冷えで夜中に目が覚めることが減った。
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今の自分の体がどういう状態なのかも、わかるようになった。だから当時のような、わけのわからない不安はもうない。同じ症状でも、知っているのと知らないのとでは、しんどさが全然違うのだ。
あのとき私は「何も変えられない」と思っていた。でも体は、続けたことをちゃんと覚えていってくれる。だから今しんどい方には、こんな私でも変わったということだけ、伝えたい。
▷ 冷えが変わってきた話 → 更年期の冷えは変えられる|去年はカイロ、今年は芯が冷えない私の実感
▷ 私がやっている整え方のまとめ → 更年期の「整う」は温泉と水風呂で|サウナが苦手な50代がたどり着いた温冷浴のやり方
※これは私の体験の記録です。私は当時、怖くて病院に行けませんでした。でも今なら、迷っている方には受診をおすすめします。動悸や不眠、ひどい寝汗が続くときは、更年期以外の原因が隠れていることもあります。婦人科や内科で相談してみてください。
