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食後すぐのお風呂はよくない?|血糖で調べたら運動とは逆向きだった

湯船のふちに置かれた砂時計を描いた水彩画。手が砂時計に添えられ、奥に窓と緑が見える からだと暮らし

更年期に入ってから、体重が落ちにくい。

同じように食べて同じように動いているのに、前と同じようには減らない。そういう人は多いと思う。

そんなとき、食後の血糖値の上がり下がりを抑えると太りにくいと聞いた。そして食後に2分でいいから筋肉を動かすといいとも。

それで夜は、食事のあとすぐに夫婦で犬の散歩に行くようにしている。

ご飯を食べて、お茶碗を洗ったら、そのまま出る。だいたい30分から40分歩く。早歩きではなく、普通にゆっくりだ。元気な日はモモを大きく上げてみたり腕を大きく振ってみたりするのだけれど、そういうのはなかなか続かない。食後すぐに散歩、ということだけが続いているという状態になる。

それでも変わったことはあって、食後にがくんと眠くなることが少し減った気がする。気のせいかもしれない。ただ、前は洗い物を終えるころにはもう眠くて、そのままソファでうとうとしてしまうことがよくあった。

体重のほうは全く変わっていないのだけど。

ここで、ひとつ気になることが出てきた。

お風呂はどうなんだろう。

お風呂に入ると、けっこうカロリーを使っている気がする。上がるとお腹が減るからだ。それなら食後にお風呂でもいいんじゃないか。

ところが調べると「食後すぐの入浴は避けましょう」と書いてある。運動のほうは「軽ければいい」なのに、お風呂は「避けろ」なのか。

知りたくなって、調べた。

結論から

食後すぐのお風呂は、血糖の上がり下がりを抑えない。むしろ入浴中は上がる。

ただしお風呂が無駄という話ではなかった。効く時間帯が違う。

そして水風呂は、お湯とは逆向きだった。

順番に書いていく。

運動とお風呂は逆に働いていた

運動は、筋肉が動くと筋肉そのものが血の中の糖を取り込む。インスリンの助けがなくても取り込むので、血糖が下がる。

熱いお風呂は違った。39度に60分浸かったときの測定で、こうなっていた。

  • 血の中のアドレナリンが2.7倍
  • 成長ホルモンが10.7倍

どちらも、肝臓から糖を出させる方向に働くホルモンだ。

13件の研究をまとめた分析でも、結果は揃っていた。

  • 糖を摂った状態で温めると、温めている間に血糖が上がる(糖尿病でない人でも、糖尿病の人でも)
  • インスリンのほうは、温めても温めなくても同じ
  • 結論は「短期的には血糖への利益はない」

同じ「体が温まる」でも、運動とお風呂では中身がまったく違っていた。

でもお風呂は効く。あとから

ここが面白かった。

イギリスの研究で、運動不足の男性10人が40度のお湯に1時間浸かった。

  • 使ったエネルギーは126キロカロリー。じっとしているときの80%増で、25〜30分のウォーキングに相当する
  • そしてそのあとの食事で、血糖のピークが約10%低かった。比べた相手は、同じ人が自転車をこいだ日だ。つまり運動した日より、お風呂に入った日のほうが低かったということになる

さらに、40度に1時間を2週間で8〜10回繰り返すと、インスリンの効きがよくなったという報告もある。

入浴中は上がる。でも、あとの食事では下がる。繰り返すと体が変わる。

時間軸が違っていた。

「お風呂でカロリーを使っている気がする」という体感は、当たっていた。お腹が減るのも本当だと思う。

ただし1時間の数字だということは、押さえておきたい。短い時間ならもっと少なくなる。では15分ならいくつかというと、そこは分からない。体が温まるまでに時間がかかるので、単純に4分の1になるとも限らないからだ。

ただ、ここまで書いておいて何だけれど、お風呂は運動の代わりにはならない。研究した人自身が「健康のためにはやはり体を動かすのがいちばん」と言っている。

それなら食後の入浴は自分で乱高下を起こしているのか

ここで、もうひとつ疑問が出てくる。

食後すぐにお風呂に入ると、結局その乱高下を自分で起こしていることになるのか。

研究が示しているのは「温めている間、血糖が高くなる」というところまでだ。急に上がって急に落ちる、という意味の「乱高下」まで測られているわけではない。そこは分けて考えたいと思う。

そしてもうひとつ。食後を避けて、いまのように定期的にゆっくり浸かるのは、乱高下しにくい体をつくる方向になるのか。

その可能性はある。2週間で8〜10回繰り返した研究で、インスリンの効きがよくなっていた。インスリンが効きやすい体は、食後に血糖が上がりすぎにくい。

ただし、その研究は2型糖尿病の人が対象で、条件も「40度に1時間」だった。健康な人が15分浸かるのと同じとは言えない。

食後に軽く動くのは消化の負担にならない

ここも確かめた。「運動はよくてお風呂はダメ」の理由が知りたかったからだ。

日本の研究に、はっきりした数字があった。

まず前提として、食事をすると門脈の血流は増える。門脈というのは胃腸から肝臓へ栄養を運ぶ血管なので、消化のためにそこへ血が集まるわけだ。

そのあとに運動をすると、どうなるか。

  • そこそこきつい運動(最大の60%)…その増加が抑えられた
  • 軽い運動(最大の30%)…抑えられなかった

つまりきつい運動は、消化に集まるはずの血を減らしてしまう。軽い運動なら減らさない。

結論はこうだった。低い強度の運動では、運動よりも食事のほうが内臓の血流を決めている。

軽く歩くくらいでは、消化に使う血は奪われない。

逆に走る・筋トレのような激しい運動を食後すぐにやるのはよくない。こちらは裏が取れている。血液が筋肉と皮膚に回ってしまうからだ。

「息が少し上がる程度まで」が線引きになる。犬の散歩も、10数えて1回のスクワットも、こちら側だ。

「食後の入浴は消化に悪い」は確かめられなかった

調べていて、ここで行き詰まった。

しくみは2つ説明できた。でも「実際に消化が悪くなった」と測った研究は、私には見つけられなかった。

しくみ① 熱で皮膚の血管が広がる。血液が皮膚に集まるので、そのぶん胃腸に行きにくくなる

しくみ② 水圧で、足とお腹から血液が心臓のほうへ押し戻される

②は冬の朝に水シャワーを浴び続けた話で書いた「中心に戻る」と同じことだ。湯船に浸かると水圧でお腹と足の血が押し上げられる。お腹から血が出ていく。

温泉分析書の別表。入浴前の注意として食事の直前、直後及び飲酒後の入浴は避けることと書かれている
温泉の掲示にある「入浴前の注意」。いちばん上に書いてある

環境省の指針に「食事の直前、直後及び飲酒後の入浴は避けること」と書いてあるのは事実で、明治温泉でもしみずの湯でも、掲示に同じ言葉があった。

ただ、それを裏づける測定は見つからなかった。昔からそう言われていて、しくみも説明がつく。でも確かめた研究は見あたらない。そこまでしか書けない。

水風呂は血糖には逆向きだった

ここがいちばん驚いた。

Nature Medicineという雑誌に載った研究で、2型糖尿病の8人を14〜15度の環境に10日間置いた。

末梢のインスリン感受性が、約43%改善した。

そして、しくみのほうが大事だった。てっきり褐色脂肪が燃えたのだろうと思っていたら、そうではなくて、骨格筋のGLUT4という糖の入口が細胞膜に出てきていたのだという。しかもインスリンとは関係なく、である。

これは運動とまったく同じしくみになる。筋肉がインスリンの助けなしに糖を取り込むようになる、ということだ。

熱いお風呂が血糖を上げる側なら、冷たいほうは下げる側という可能性が出てきた。

ただし但し書きが3つある。

  1. 続きの研究では、16〜17度で震えが出ない程度だと改善しなかった。震えるくらいの寒さが要るらしい
  2. 研究は「涼しい環境に10日間」であって、水風呂に数分ではない
  3. 食後すぐの水風呂で血糖がどうなるかを測った研究は、見当たらなかった

つまり、方向は逆かもしれない。けれど確かめられてはいない。

水風呂は食後に危ないのか

ここは調べていて、自分の思い込みを直すことになった。

冷たい水に入ると血圧は上がる。氷水のシャワーを1分浴びたとき、130/76だったものが175/93になったという測定がある。上が45も上がっている。

これは「コールドショック反応」と呼ばれるもので、冷たい水に触れた瞬間に息をのみ、心拍が上がり、血管がきゅっと縮む。最初の3分ほどで起きる。10〜15度でも、2度と同じくらい強く起きるとされている。

ただし健康な人では、出たあと数分で元に戻る。体が正常に反応しているだけだ。

危ないのは、高血圧や心臓の病気がある人。そこははっきり書かれている。

そして「食後だから特別に危ない」という根拠は、私には見つけられなかった。血圧が上がるのは、食後かどうかに関係なく冷たい水に入れば起きることだった。

冷水は体に悪いという思い込みを前にひっくり返したことがあるけれど、今回の数字もその線と矛盾しない。血圧が45上がるのは「危ない証拠」ではなく、体がちゃんと反応している証拠のほうだ。

慣れがいちばん効く

もうひとつ分かったことがある。

  • 最低4回の短い冷水浴で、コールドショック反応ははっきり弱まる
  • その効果は7〜14か月続く

私の水風呂の入り方を書いたときには知らなかったけれど、あの「慣れると平気になる」は、測られていた。

そして入り方でも変わる。

冷たい水では、正反対の2つの反応が同時に起きることがある。コールドショック反応は交感神経で心拍を上げる。潜水反射は副交感神経で心拍を下げる。息を止めて顔に水がかかると、この2つが同時に働く。

数字がはっきりしていた。

入り方不整脈が出た割合
自由に呼吸しながらの冷水2%
顔を水につけて息を止める82%

※「顔を水につけて息を止める」という条件での実験なので、水シャワーとそっくり同じではない。ただ息を止めるかどうかが分かれ目になっているのは同じだ。

私はちょうど1年前から、息を吐きながら浴びるように変えた。それまでは、どうしても最初に息を止めてかぶっていた。吐きながらのほうが体が楽だと気づいて変えたのだけれど、楽なだけではなかったらしい。

3本の線にまとまった

やること食後すぐ血糖への向き
軽い運動○ 内臓の血を奪わない下げる
熱いお風呂しくみ上は避けたほうがいいとされる上げる
水風呂食後だから悪いという根拠はない下げる方向かもしれない

食後すぐは、やっぱり軽く動くのがいちばんという結論になった。

私がやっている食後の犬の散歩は、そのままでよかったことになる。

お風呂は、食事から離して入る。そして続ける。そういう使い方になる。湯治というのは、まさにそれを何日も繰り返すことだった。

これから試してみること

ひとつ、やってみたいことができた。

朝食のあとに水シャワーを浴びてみる。

理由は3つある。

  1. 「食後だから悪い」という根拠は見つからなかった
  2. 寒冷は血糖を下げる方向かもしれない。しかもしくみが運動と同じ
  3. 私はもう1年、息を吐きながら浴びている。慣れている

ただし効果が保証されているわけではない。研究の条件は「14〜15度の環境に10日間」であって、水シャワーを数十秒ではないからだ。

だから測ってみようと思う。

いまは腕に貼って2週間ずっと記録するセンサーが、処方箋なしでも買える。水シャワーを浴びた日と、浴びなかった日を比べる。それだけで答えが出る。

やったら、また書く。

最後に線を引いておく

  • ここに出した研究は、40度に1時間や14度に10日間といった条件でのものだ。日本のふつうの入浴(15〜20分)とは別物なので、そのまま当てはめないでほしい
  • 2型糖尿病の人を対象にした研究が多い。健康な人にそのまま当てはまるとは限らない
  • 血糖が一時的に上がること自体が、すぐ「悪い」わけではない。体が反応しているというだけの話でもある
  • 高血圧や心臓の病気がある人は、水風呂も熱いお風呂も、まず主治医に聞いてほしい

私は医者ではないし、ここに書いたのは調べたことと自分の体で感じたことだけだ。そのつもりで読んでもらえたら嬉しい。

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