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玉造温泉|宿のことは覚えていないのに、体が楽になった感覚だけ覚えている

夕暮れ、川沿いに旅館の灯りが並ぶ温泉街 温泉のある場所

一番つらかった時期に行ったのが玉造温泉だった。この旅行で入ったお風呂が、その後の更年期との向き合い方や、温泉との距離感を大きく変えることになる。

▷ そのときの話はこちら → お湯の中でも寒かった私が、一晩で体が楽になった話|温泉とからだの記録

宿のことも食事も覚えていない

泊まった宿の名前も部屋の様子も、食べたものも、正直ほとんど覚えていない。家族に聞いて「玉造国際ホテルだったよ」と教えてもらった。あとからホームページを見ても「こんなところだったんだ」と驚くほど記憶がない。こんなに覚えていない旅行もあるんだなと不思議に思う。

それなのに、ひとつだけはっきり覚えていることがある。お湯に浸かっている自分の姿と、冷えが取れて体が楽になったという感覚。思考より先に体が反応していた。今思うと、そんな温泉体験だった。

熱さを強く感じなかった

玉造温泉に着いたとき、正直特別な期待はなかった。自分の意志で来たのでもなかったし、家族の思いやりを断れずに来ただけだったから。お風呂も「来たからには入っておこう」そのくらいの気持ちだった。

玉造温泉は一般的に湯温が高めと言われている。でもそのときの私に「熱い」「長く入れない」という感覚はなかった。芯まで冷えていた体にじわっと染み込んでいくような、不思議な心地だったことだけを覚えている。

それなのに体は楽だった

これまで温泉に行くことはほとんどなく、入るとしてもいわゆるスーパー銭湯だった。「温泉=気持ちいい」くらいの認識しかなく、体がどう変わるかなんて考えたこともない。それなのにこのときは違って、楽だなという感覚だけが静かに残っていた。

冷えが戻らなかった夜

その日の夜は、いつものように冷えが戻ることがなかった。布団に入るとすぐにウトウトして、久しぶりにぐっすりと朝まで眠れた。

夜の時点では「温泉が効いている」などと思っていたわけではない。ただ体がほぐれてリラックスしている、そんな感覚だった。

覚えていないのに、体だけが覚えていた

不思議なのは、この温泉旅行のほとんどを覚えていないことだ。建物の雰囲気も、部屋の広さも、食事の内容も、写真を見て初めて知るような状態だった。それなのに、お湯に浸かっている感覚と体が楽だったことだけは、はっきり覚えている。

「こんなこともあるんだな」。あとからホームページを見ながら、そんな風に思った。

後から知った玉造温泉の泉質

家に帰ってから、玉造温泉のお湯について調べてみた。

泉質は、正しくはナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉というものだった。

塩化物泉と硫酸塩泉、二つが重なっているお湯だ。

塩化物泉は、肌の表面に膜を作って温まった体を冷ましにくくする。そのときの私はもちろんそんなことは知らない。ただ冷えが戻らなかったという記憶から、あとになって「あれは塩化物泉の湯だったから温まったのかもしれない」と思った。

調べていて、手が止まった。

この二つの泉質に定められている泉質別適応症は同じで、きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症だった。

「冷え性」と「うつ状態」が、両方入っている。

冷えが戻らなかったことも、次の日に気力が戻って出雲大社まで行けたことも、泉質の適応症にそのまま書いてあったということになる。

もちろん、私が体験したのがそれだと証明できるわけではない。そのとき掲示を読んだわけでもないので、これは後から調べた話だ。それでも、あとから知って驚いた。

ずっとあとになって、この塩の膜のことをもう少し詳しく知ることになる。塩化物泉は同じ温度でも水道水のお風呂より体温が速く上がるらしい。家のお風呂ではどれだけ追い焚きをしてもお腹が冷たかったのに、玉造では最初から冷たさを感じなかった理由が、ようやく分かった気がした。

▷ 塩の膜の話はこちら → 蒲田の黒湯温泉|東京で一番黒いお湯に入りに、夫婦で通うようになった話

1300年前から「神の湯」と呼ばれていた

もうひとつ、調べていて驚いたことがある。

玉造温泉は奈良時代に開かれたと伝わり、『出雲国風土記』に記録が残っている。そこでは「神の湯」と呼ばれていた。

書かれているのは、こういうことだ。

ひとたび濯げば形容端正しく、再び浴すれば万の病ことごとく除こる。効き目がなかったという人はいない

今の言葉にすると、一度入れば見た目が整い、二度入れば病が治るということになる。しかも「効き目がなかったという人はいない」とまで言い切っている。

ずいぶん大きく出たものだと思う。

でも、1300年前の人が書き残したことと、私がお湯の中で感じたことが、同じ場所で起きている。そう思うと不思議な気持ちになった。

玉造温泉が「日本最古の美肌の湯」と呼ばれるのは、この記述があるからだ。

そして最近、面白いことを聞いた。玉造温泉のお湯は、そのまま化粧水として使われているらしい。

調べてみたら本当だった。温泉街に「湯薬師広場 たらい湯」というところがあって、源泉を汲んで持ち帰れる。容器を持っていけば無料、なければ200円でボトルを売っている。

温泉水を使った化粧品もある。「玉造温泉美肌研究所 姫ラボ」が2010年から作っていて、温泉水100%のミストや、温泉水を80%配合した化粧水が並んでいる。

あのとき私は、そんなことをまったく知らなかった。お湯に浸かって、冷えが取れて、それだけで帰ってきた。

今なら、ボトルを持って行くと思う。

気力が戻って、出雲大社へ

チェックアウトする頃には気力が戻っていて、そのまま出雲大社に足をのばすことができた。初めて訪れた出雲大社の厳かな空気。そのあと立ち寄った石見銀山で少し歩いたこと。細かいことは覚えていなくても「楽しかった」という感覚だけは残っている。

記憶より、体の反応のほうが確かだった

今振り返ると、玉造温泉で起きていたのは「治った」でも「効いた」でもなく、「体が温まってほぐれていた」そんな変化だったのかもしれない。

お湯の温度だけではない色々なことが私の体に関わっていたことに、このときはまだ気づいていなかった。温泉で感じた「水圧」のことは、あとから詳しく調べて書いた。

▷ 水圧の話はこちら → お風呂の水圧って体にどう働く?|温熱・水圧・浮力と、立ち風呂の水圧は約2倍

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今回泊まったのは玉造国際ホテル。正直、滞在の記憶はほとんど残っていないけれど、場所や泉質の参考として公式サイトを貼っておきます。

▶玉造国際ホテル 公式サイト

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▷ こんなふうに連泊で温泉を巡っています → 温泉の連泊、どう過ごすか|湯めぐりと湯治は別だった。私の3つの型

※これは私の体験の記録です。冷えやしんどさが続くときは、我慢せず婦人科や内科で相談してください。

▷前の記事 月に3〜5回、日帰り温泉に通うようになった|元気なおばあさんたちに教わったこと

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施設データ

※これは玉造温泉という温泉地全体のデータです。泊まった宿のことは覚えていないので書けません。

  • 泉質:ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉(弱アルカリ性)
  • 源泉温度:42℃以上。施設によっては69.8℃と高いので加水しているところもある
  • 似ているお湯:塩化物泉なので尼崎の湯の華廊と同じ「塩の膜で熱を逃がさない」系統。ただし玉造には鉄が入らないので透明で、そこに硫酸塩が加わる。硫酸塩泉は温泉の水分を肌に運んで保湿するとされている
  • 美肌の湯:メタケイ酸と硫酸イオンをバランスよく含み、化粧水に匹敵する潤いの効果があるという調査がある
  • 歴史:1300年以上。日本でもっとも古い温泉のひとつとされる

※2026年8月に調べたものです。料金や設備は変わることがあるので、おでかけ前に公式サイトでご確認ください。

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